10人が本棚に入れています
本棚に追加
「Yの34番地、ここね。まぁ、素敵なお屋敷だこと」
そこには二階建ての立派な屋敷が建っている。彼女達の家は、赤子が来る朝に出来上がる。新月の朝は決まって濃い霧に街が包まれ、霧が晴れると新しい家が建っている。
住所はひとつのアルファベットに対し0から66まである。魔女が死ねば家も消えるため、彼女達はよっぽど仲がいい魔女の家以外は覚えていない。そのため、新しい家が建とうが気づかないことがほとんどだ。
「さぁ、ここがあなたのおうちよ、シャルロット」
魔女達は扉を開けて屋敷の中に入る。屋敷の中はあたたかみのあるクリーム色を基調としていて、可愛らしい。奥には暖炉もある。
「ここでお茶会をしたら楽しいでしょうね」
「大きくなったら招待してね、シャルロット」
彼女達は屋敷の中を見回しながら、まだ赤子のシャルロットに声をかける。
30代ほどの魔女はシャルロットを抱き上げると、ソファに寝かせた。ゆりかごから出さないと、一晩で成長する魔女がゆりかごを突き破ってしまうのだ。
「おやすみ、小さな魔女さん」
まだ申し訳程度にしか生えていないブロンドの髪を撫でると、魔女達は新築のにおいがこもった屋敷から出た。
最初のコメントを投稿しよう!