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「たまたま、うちのパンにも同じ応募券ついてるなって思ったから集めてみたんだが。
慣れないことするのは、恥ずかしくて、すぐには渡せなかったんだ」
それで、3枚たまっていたようだ。
食パンについているものなので、そのとき食べていたのが何枚切りのパンだったのかわからないが。
3枚ためるためには、12日以上はかかっているはずだ。
「渡すの抵抗あったけど、勇気を出して渡したら、お前が笑ってくれて。
その顔を見たら、なんだかすごいいいことした気がしたんだ――」
と熱く語る琢磨に汐田が言う。
「いや、応募券切ってあげただけですよね?」
「お前が俺を好きになってくれて。
見返りを求めず、人になにかしてあげると、いいことあるんだなって。
まあ、わざわざ切って渡そうと思ったときから、お前のことが気になっていたのかもしれないが。
……あのとき、やっぱり、そんなのガラじゃないと思って、パンの袋をゴミ箱に突っ込まなくてよかった」
と言う琢磨と見つめ合ったとき、汐田が、
「でも、別れるんですよね」
とサラッと言ってきたので、思わず、二人で睨んでしまった。
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