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数日後、柚葉が一階ロビーに行こうとエレベーターに乗っていると、琢磨も途中の階から乗って来た。
「お疲れ様です」
と頭を下げた柚葉に、琢磨はあの日と同じようにエレベーターの壁に背を預け、ぼそりと言ってくる。
「破談にした」
「え?」
「あの話は破談にしてもらった。
じいさんの決めた相手と結婚するのが、此処の社長になる条件だったから、もう此処には居られなくなるかもしれないが。
まあ、お前に騙されたとか言われて、殺されるよりマシかな、と思って」
「いや、殺しませんよ……」
と柚葉が言うと、琢磨は壁から身を起こし、まっすぐ柚葉を見つめて言ってくる。
「なんでだ、殺せよ。
お前の俺に対する愛情は、坂上のスパイに対する愛情より薄いのか?」
と。
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