3時に破滅します

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 仕事中の態度と全然違ってて、この人、本当は、どんな人なんだろうって、そのとき、初めて、社長の立場にないときのこの人に興味が湧いたんです。  だって、可愛くないですか?  仕事中は笑いもしないこの人が、大きな身体で、背中丸めて、家でチョキチョキ、パンの袋から応募券を切り取ってくれてたかと思うと」  柚葉が集めている応募券は、シールではなく、袋にそのまま印刷されているタイプのものなので、いちいち切り取らねばならないのだ。  めんどくさいので、柚葉も最初は集めてなかった代物(しろもの)だ。  はあ……、と汐田がよくわからないような相槌を打つ。 「女子って何処に萌えるかわかんないもんだね。  僕も今日から応募券集めて誰かにあげることにするよ」 と言い出したが。  いや別に、応募券をくれたから惚れたわけではないのだが……、と思う柚葉の前で、琢磨はあのときと同じに照れ臭そうな顔をして言ってくる。
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