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小さく乾杯したあと、二人は楽しく語り合いながら、運ばれてくる海藻と多糖類ゼリーのオードブルや人造野菜のサラダ、貝ときのこのスープ、それに魚料理などを味わった。
食後の代用コーヒーを飲みながら、ケイはふと、彼の贈った花束を見つめるエルの表情が曇っているのに気付いた。
「それどう? 何なら改めて別の花束にしてもいいんだよ」
「いいえ、そうじゃないの。こんな素敵なプレゼントは初めてよ。でも……」
「でも?」
「結局この花束も造り物なのね。私一度でいいから本物の花が見てみたい。本物の花を手に取ってみたいわ」
「本物の花……」ケイは一瞬口をつぐんだ。「でも大丈夫さ、そのうち誰かがタイムマシンでも発明して、過去から花を山ほど採ってきてくれるんじゃないかな」
エルはさびしい笑顔を浮かべた。
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