第一部 ケイの冒険

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 こうして人類は、花という美しい友を失ったのであるが、その哀しみは造花という唯一の慰めによって和らげられることになったのである。  ケイが企画営業部の社員を務めている会社「PFC(ピー・エフ・シー)」(プラスチック・フラワー・カンパニー 設立二〇三五年)の開発した「プラスチック・フラワー」は、造花とは思えぬほど本物そっくりの形・色・香り・手触りを持っていた。またそれは同時に、ナイフで切り付けても傷つかないほど実物とはかけ離れた強靭さも持っていたが、ひとたびこの商品を売り出すや、PFCは一躍一流巨大企業となったのである。
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