第一部 ケイの冒険

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第一部 ケイの冒険

          1   その日、ケイは繁華街のレストランに着くと、ガラスのドアを鏡がわりに髪型とネクタイを整え直した。ケイは今夜のデートはこれまでになく楽しいものになるだろうという期待でウキウキしていた。ケイがガラスに顔を寄せていると、目の前のドアが急に開き、金色のモバイル端末を持った毛皮のコートの中年婦人が現われた。ケイが慌てて身をよけると、彼女はムービー・スターみたいな足どりで通り過ぎていった。確かあれは2060最新モデルだったかな、と、ケイはどうでもいいことを考えた。そして気を取り直すと自分の手に持ったものに目をやった。  ──これを見た時のエルの驚き様ったらないぞ。  ケイはプレゼントを満足気に眺めたあと、それを背中に隠して中へ入っていった。
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