第一部 ケイの冒険

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          2  ケイは自分の部屋の窓から、ぼんやりと街の風景を眺めていた。  ケイの住む街は、高度に街としての機能を追求された、二〇六〇年のこの時代においても新しい都市である。超高層ビルが立ち並び、その間を四階層のハイウェイの曲線が縫っている。緑は市民のための公園にほんの気持ちばかり見られるだけである。この街は、確かに機能美という最高の美しさを備えているが、時として人々の心に、自分達の単調で無味乾燥な毎日を改めて思い知らせるガラスの街でもあった。  エルとレストランで会った夜以来、ケイの頭の中には、彼女の言った本物の花が見たいという言葉がこびり着いて離れなかった。 「本物の花か……」ケイは溜息まじりにつぶやき、以前本で読んだ事を思い返した。
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