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シュルツがホッとしたようにクープに言った。
「今日のところは芝居だったことにしておくけど、もうこんなことは無しだぞ?俺だってお前を憲兵に突き出すようなことはしたくないんだ。」
クープは頷き、もう一度「ごめんなさい。」と詫びた。
「わかればいい。」
次にシュルツはアシェルとレビィを交互に見つめた。
「ありがとう。君達のお陰でクープを泥棒にしなくて済んだ。それにしても2人ともいい腕だな。コンテストに参加するのかい?」
アシェルとレビィはキョトンとした。
「コンテスト?」
「知らないのか?2週間後のフェスティバルでヴァイオリンのコンテストをやるんだ。優勝すると15歳以下の部で金貨3枚、一般の部で金貨5枚を貰える。もし参加するならまだ間に合うから役場へ行って申し込むといい。仕事柄、俺はいろんな演奏を聴いてきたが君達なら優勝も夢じゃないぞ。」
シュルツは説明を終えると「それじゃあな。」とクープの頭をひと撫でして、ヴァイオリンを手に店へ戻っていった。
その背中を見送っていたアシェルとレビィにシンシアが深々と頭を下げた。
「クープを庇って下さってありがとうございました。」
アシェルは照れたように頭の後ろをポリポリと掻いた。
「いやぁ、別に庇ったわけじゃないよ。」
「ちょうどいいから宣伝に使わせて貰っただけだ。」
レビィもしれっとして言った。
「そうだとしてもクープが助かったことには変わりません。たいしたことはできませんがどうかお礼をさせて下さい!」
「お礼?」
「はい!」
シンシアはニッコリと微笑んだ。
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