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中条香苗は私の一番の親友。中学、高校、大学と一緒で、就職先こそ違うものの、隣り合うビルのオフィスで働いていた。
香苗は大学時代から付き合っていた男に浮気され、男性不信に陥っていた。
「もう男なんて信用できない。一生恋愛なんてするつもりないよ」
仕事が終わった後一緒に飲んでいると、香苗はよく言った。
「まあ男なんて信用できないよね。でも、一生恋愛しないで生きていくのはつまらないよ」
「華に言われたくないけどね」
香苗はそう言った後、ハッとしたように私を見た。
「ごめん、悪気はなかった」
「別にいいよ。確かに私に恋愛のことなんて語る資格ないもの」
この世に生まれ落ちて二十六年。恋人がいたことはない。でも好きな人ならずっといる。片思いかもしれないけれど、その思いを頼りに生きている。香苗にその話をしたことはなかった。
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