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高校二年生の夏休みに入る直前に受けた模試の結果が返ってきた。 国立の医学部医学科という選択肢以外与えられていない模試の結果には、Eというアルファベットが縦一列に並んでおり、その成績表を見た母親は、俺の首を泣きながら絞め、家を飛び出し、そして偶然通りかかった自動車に轢かれ、彼女は死亡した。 その車に乗っていたのは、普段はあまり家に帰ってこない、仕事と結婚しているような父親で、その時俺は、自身ではなく、母がこうなった原因をすべて父親に擦り付けた。そうしなければ、自分自身を保つことが出来なかったからだ。 父が俺に対して最後に見せた顔は、怒りでも戸惑いの表情でもなく、ただただ道端に落ちている生ゴミを見るような、侮蔑が込められた冷たい目がそこにあった。 どれほど後悔してもし足りない日は、これで二度目。 二度あることは三度ある。その言葉を信じている訳ではないけれど、もう大切なものはもたないと、心に決めた。 携帯のアラーム音で目が覚めると、自分の真正面に見知らぬ男が横になっていた。 「おはよう、渚」 一人暮らしの一軒家。 見慣れた天井に、数年間慣れ親しんだベッドや毛布の感触。 普段と違うのは、そこに自分以外の存在がいるということだ。 「随分とうなされてたみたいだけど、大丈夫?今、朝食作るね。何が食べたい?」 女子受けしそうな甘い声の男は、同じ高校の制服に青いエプロンを身に着け、こちらを嬉しそうに眺めている。 昨日の、夢じゃなかったんだ・・・。 意図的にため息を漏らすと、彼は、今日の朝食のメニューは何がいいかを再び聞いてきた。 「フレンチトースト」 「了解。渚も、早く着替えて。遅刻しちゃうよ」 「はいはい」 部屋を出ていく直前に彼は足を止めて、まだベッドの上にいる俺の方を振り返った。 「あ、そうだ。寝顔、ご馳走さま。渚、寝てる時の方が、ずっと可愛いよ」 「うっせえ、馬鹿!この変態!」 彼は投げた枕をさっとかわすと、笑いながら部屋を出ていった。 俺は昨日まで彼のことを何も知らなかった。 彼は昨日、この時期には珍しい転校生として現れ、そしてこの家に押しかけ、同居することになった。 全くもって意味不明だった。
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