《4》

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 天井のスピーカーから、放送部のミスを謝るアナウンスが聞こえてきた。 「あーあぁ、どれが無事だ?」  大きなゴミ袋を抱えて急ぎ足でこちらに来た彰人先輩は、見事に金色に染まった机上を眺めて言った。制服にペンキがついてしまった部員もいるようで、現場は大混乱だ。それなのに私の心は静まり返っていて、 「先輩、これ。これだけ無事です」  私が1センチだけ浮かせたその願い事の紙だけは、金に染まらず真っ白のまま、私の掌に収まっていた。 「救出しました」  その瞬間を見ていたのは私と、きっと京ちゃんだけ。 「お、よくやった」  紙を持った掌をいつまでも広げたままの私に、先輩が不思議そうな表情をする。 「私、ペンキが付いてないか確認したいんで、ちょっと先輩持っていてもらえませんか?」 「おぉ、そうゆうことか」  そう言って先輩は手を伸ばし、私から2つ折りのその紙を受け取った。  私と彰人先輩の手が、紙を通じて一瞬だけ繋がって、離れた。    その瞬間、私は猛烈ダッシュで廊下へ出る。  彰人先輩が私から受け取った紙には、こう書いてある。 《クラスメイトの変人部長さんと、ファイアーストームの火が消えるのを見届けたい 御園真理》  
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