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《2》
高校生になり特段入りたい部活も熱意もなかった私は、この能力について何かわかるかもという気持ちから超常現象研究会に入部した。
今までも自分と同じ能力の人がいるのではないかとネット上に乱立する超能力関係の掲示板を回ったり、その関係のオフ会に参加してみたこともあったが効果は芳しくなく、アニメや漫画を見過ぎた中2病めいた人か、怪しい宗教関係者に勧誘されるのがオチで、到底自分の能力について話せるものではなかった。
「加納、ちょっと」
結局、この超常現象研究会も類に漏れずただ部室に集まってお菓子を食べながらオカルトDVDを観るだけの部活といっても過言ではない。
だからと言って退部しないのにも理由がある。
「加納?」
はっとして顔を上げると、彰人先輩の切れ長な目がこちらを見ていた。恐らく身長が180センチはあるだろう彰人先輩は、152センチしかない私からするといつも見上げないと会話が出来ない。逆に言うと私と話す時の部長はいつも少し私を見下ろす形になり、標準より少し長めで、艶のある黒い髪の毛がさらりと前に流れ落ちるのだった。
「あ、すみません。ちょっと意識飛んでました」
「どうした?疲れたか」
小さな子供じゃあるまいし。身長のせいか何なのか、彰人先輩は私を子供扱いする。
「大丈夫です」
「よし、そんな加納にはこれをやろう」
大丈夫だと言っているのに、人の話を聞いちゃいない彰人先輩は、ぱっとその場を離れると自分の学生鞄を引っ張り出して中をごそごそとしている。
「ほれ」
彰人先輩の手には、チョコレートが入った袋が握られていた。チョコレートは私も良く買う船のデザインのものだったが、彰人先輩のものはお得パックのようで、小分けになったチョコレートが大きな外袋の中に大量に入っている。中から1つくれるのかと思って摘まもうとすると、
「違う。そうじゃない、皿にして、皿」
私を見た彰人先輩が首を振った。言われたとおりに私が両手を広げると、
「それっ」
彰人先輩は袋をひっくり返すと、私の両手いっぱいにばら撒いた。チョコレートが、私の手から零れ落ちる。驚いた私が顔を上げると、
「疲れた時には甘いものだからな」
彰人先輩は楽しそうなおもちゃを見つけたような顔で笑っていた。
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