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〇〇しないと出られない部屋
――『どちらかが相手を泣かさないと出られない部屋』
ヒロとビアンカの前に置かれる紙に書かれた文字。それを目にして、床に座り込んでいるビアンカは不思議そうにして首を傾げた。
「――泣かさないと出られない部屋?」
キョトンとした面持ちで、ビアンカがぽつりと零す。
ビアンカと紙を挟んだ対面で胡坐をかいて座るヒロも怪訝そうに眉を寄せ、紙に書かれる文字を凝視していた。
「これ、なあに?」
「……さあ?」
ビアンカが疑問を口にするも、ヒロにも何が起こっているのか一切分からない。返弁の短い声を発すると共に、ビアンカと同様にヒロも首を傾げてしまう。
「『どちらか』ってことは、どっちかが泣けば良いってことだよね?」
「そういうことよねえ。――というか、そんなことをしないと出られないの?」
苦笑いを浮かべてビアンカが問うと、ヒロは眉根を下げて肩を竦めた。
「これが厄介なことに、この部屋ってば出入口が一切無かったんだよ。壁を叩いて調べてみたけど、継ぎ目も細工も無いし。なんか、魔法空間の一種って感じかな」
ヒロとビアンカは四方を真っ白な壁に囲われる殺風景な部屋に、突として放り込まれた。――というよりも、気が付いたら二人は部屋にいた。直前まで何をしていたかは、記憶に無い。
部屋を不可思議に思ったヒロが壁を一通り叩き、不審な部分が無いか調べてはみたものの、扉も無ければ窓も無い室内の壁に、脱出できそうな細工は何一つ見当たらなかったのだ。
事態の解せなさにヒロが首を捻っていると、ビアンカが床に置かれた何かが書かれる紙を見つけて今に至っていた。
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