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「う、わ……っ!」
細指な両の手が、するりとヒロの上着の下へ潜り込む。その手の動きに、ヒロは小さく声を漏らすと身を強張らせた。
ビアンカの手は遠慮なく、上着の下で蠢いていく。――脇の下から脇腹までを、筋肉の付き具合を確認するように弄っていき、その都度、ヒロの喉がヒュッと鳴る。
俯せになっている腹と床の間に指を差し込まれた。次には指先に僅かに力を込められ、腹から脇にかけてを指が撫でていく。
その行為に大きく反応をしたものだから、ビアンカは気を良くしたのか、再び同じように触れてくる始末。
「あ、は……っ、そこ、ダメ、だから……っ」
詰めた声で訴える。これ以上は駄目だと心中で思うものの、ビアンカの指の動きに翻弄されて言葉が上手く出てこない。
と思えば、ビアンカが腰を屈めたらしい。結い上げている亜麻色の長い髪先がさらりとヒロの首筋を撫でていき、その刺激にさえピクリと反応を示してしまう。
身体を固くしていれば、随分近くでくすりと笑う声が聞こえる。傍から見ると、ビアンカに覆い被さられる体勢になっているはずだ。
いつの間にやら上着の襟元に手をかけられ、下げられていた。あ、脱がすつもりだ――と察した途端、ヒロは焦りから再び身を捩り始めた。
「いやっ! ちょっと待って、ビアンカッ!! ぼ、ぼぼぼ、僕っ、心の準備が、まだ……っ!!」
「心の準備なんかされたら、構えちゃってくすぐる意味も無くなるじゃないの。おとなしくしていてっ!」
「あっ! ほんとっ、ダメだって、ばっ!! ――って、あ、は……、あははははははっ!!」
大笑いをしないように息を詰めてやり過ごしていた。だが、くすぐったがる部位を無遠慮に探られ、遂には的確に刺激されてしまい、大きな笑い声が上がる。
ヒロの張った声は大きいのだが、ここは船室や宿の一室ではない。人気の無い魔法空間の部屋でうるさいと咎められもしないため、ビアンカはいい笑顔で唇に弧を描き、容赦なくヒロをくすぐっていった。
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