今日のおやつはドーナツです。

3/6
前へ
/6ページ
次へ
…話が逸れてしまった。まあ、折角だから、もう少し逸れてみるとしよう。私の自我、存在についてである。 私はドーナツなのだから、元は小麦粉や砂糖やバターを混ぜた生地だった訳で、その時には私は私として独立していなかった。ここに居る同胞たちと同一の存在であったのだ。そしてその後リング状に分けられ、油で揚げられ、今ここに居る。 私がいつから「私」を認識したかと聞かれれば、それはおそらくこの皿に乗せられたあたりであろうと思う。幸いにして、熱い油に放り込まれた記憶は無いのだから。ここがポイントで、それは決して、物理的に生地として小分けにされた瞬間では無いのである。 「ドーナツ」として完成された瞬間、私は私を認識した。私の自我は、ドーナツという属性に基づいたものであるということかもしれない。 うむ、実に真理めいた結論だ。私は満足する。それが真理らしく、また難解かつ簡潔であるほど、たどり着いた時の喜びも大きいというものだ。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加