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存在意義というものについては、何処ぞのニンゲンたちのように、何故自分は生きているのか、何故生まれたのか、などと思い悩む必要はない。
ドーナツなのだから。
夕飯を待てずにお腹を空かせた子供たちに、幸せな午後のひとときを提供することこそ私たちの使命であり、生まれた理由である。
そういえば、消費されること、存在しなくなることによって存在の意味を果たすというのは、なんだか矛盾のような気もする。それとも、食べられることは決して、存在しなくなることとイコールではないのだろうか?
私は少し恐怖を覚える。自分がこの世界から存在しなくなる想像というのは、菓子の身にも恐ろしいのだ。
そして例えば、この中心の穴は、どうなるのだろう?私のカラダの中心に鎮座する、この無の空間だけは、この世に残り続けるのか?
その無ばかりが残って、私の意識は何処へ行くのだ?
…いけない。少し動揺しているようだ。
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