金星への想い

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金星への想い

私は金星(かなほし)(みなみ)、十七歳の高校生だ。 私の高校は国内トップの理系進学校で多くの科学者や技術者を輩出していた。そんな私の高校では毎日七時限の十九時三十分まで授業が行われている。だから下校時間はいつも真っ暗だ。 この日も七時限の物理が始まる時間には窓の外はすっかり夜の帳が下りていた。 物理の宇南先生が教室に入ってくる。そして窓側の空いている席を見つけ声を上げた。 「おい、金城(かねしろ)は居ないのか? えっと、このクラスの学級委員は誰だ?」 私は素早く右手を挙げた。 「金星(かなほし)か。スマンが金城(かねしろ)を探して来てくれるか? 今日は来週のテストの話があるんだ」 「はい、分かりました」 私はそう先生に応えると、立ち上がって教室を出た。 私は幼馴染の金城(かねしろ)(かける)が何処に行っているか知っていた。彼はこの時期、必ず・・。 「金星を見に行っているんだ・・」 私は廊下を走り階段を登った。三階から四階を過ぎて屋上へ駆け上がり、屋上に続くドアを開けた。見上げると夜空に星が輝き始めている。 そして東の空には一際(ひときわ)明るい星が輝いていた。それは・・ 「綺麗・・金星だ」 私はその眩く光る星に目を奪われ、その場に立ち止まった。この時期の金星は他の星と比べて、その明るさは飛び抜けていた。金星の光を受けて私の影が屋上に長く伸びている。その影の先を見ると人影が見えた。
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