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「それは『地球』ね?」
私はそのモニターを見ながら翔に聞いた。
「そう、後方カメラの最大望遠で捉えた地球の姿だ。南、君は地球の名前の由来を知っているかい?」
「うん、確か人類が住んでいる大地の星と言う意味だったと思うけど」
翔が頷く。
「僕等が脱出した地球は、もう人類が暮らしていく力を失った。どれだけの人類が地球から金星に到達出来るかは分からないけど、人類が金星で暮らし始めたら、金星は地球と呼ばれるべきじゃ無いかな・・僕等が住む大地の星として・・」
そうかも知れないと私は頷いた。
「さあ、あと一時間で金星の大気圏突入だ。席に戻ってシートベルトをしっかり締めるんだ。金星に到着したら直ぐに迎えに行く」
「うん、待っている。頑張ってね」
私はそう言うと、彼の膝の上の地球を抱えた。そして翔に手を振ってコックピットを出て客席に戻った。シートに座ると自分と地球のシートベルトを締める。
「金星での新しい生活が始まるんだね」
地球の頭を撫でながら私は呟いていた。
そして家族全員で金星に到着出来る喜びを噛み締めていた。
私は疲れていたのだろう、そのまま深い眠りについてしまった。
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