再び金星を見上げて

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脱出ポットがこの星の“アフリカ”と呼ばれる大陸に不時着して十五年が経った。 私達はこの星を地球と呼び、代わりに私達の故郷の星を金星と呼ぶ様になっていた。この大地を地球と呼ぶのは合理的だと思ったし、金色に光る私達の故郷を金星と呼ぶのも、とても自然に感じていたんだ。 不時着してからこれまで、私達は脱出して来た仲間を探した。しかし私達の故郷、今、私達が金星と呼ぶ惑星からこの地球に到達出来たのは私と地球(テラ)の二人だけだった様だ。 この新しい地球には原始の生活を送る人類が居た。彼等は頭脳レベルも私達と変らず、言葉を操り道具を使って生活をしていた。私達は彼等に助けられ生き延びる事ができた。 そして、十六歳になった地球(テラ)はその中の男の子“ネア”と恋に落ちていた。かつて私が(かける)と恋に落ちた様に・・。 彼女がここで子孫を残せるか私には分からない。仮に子孫を残せたとして、それがこの星の生態系や遺伝子にどんな影響を与えるかも分からない。でもこれが私達の運命だ。 地球(テラ)と“ネア”のカップルは夜空を眺めるのが大好きだった。 そう今日は、金星が“最大光度点”を迎える日だった。 二人は肩を寄せ合い、金星を見上げていた。 遠い昔、私と(かける)がそうした様に。 二人が見上げる金星は、かつて私達が地球と呼んで暮らしていた故郷だった・・ FIN
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