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翔がコックピットに向かって一分程で、船内放送が流れた。
『船長の金城です。あと三十秒ほどで離床です。皆さんシートベルトの確認をお願いします。この後、必要に応じてコックピットから飛行状況を報告します』
その時、私が座った左側の窓の外で爆発が見えた。宇宙船がガタガタと揺れる。
「攻撃を受けているぞ!」
乗客の誰かの声が聴こえる。
『打上げ、十秒前、八、六、メインエンジン始動』
船体後部から大音響が聴こえて来る。それと共に船体が激しく振動を始めた。
『三、一、離床』
翔の声に合わせ、私の身体に大きな加速度が襲って来た。宇宙船が発射台から打上げられたんだ。振動と加速度で隣の地球が目を覚まし泣き出す。私は彼女の頭を撫でながら、打上げ成功を神に祈った。
宇宙船は素晴らしい加速力で上昇していく。遠くに私達が住んでいた街の灯り見える。その瞬間、その街の上空で眩い閃光が走った。核ミサイルが私達の街に着弾したんだ。程なくして宇宙船が激しく揺れたが、宇宙船の加速は続いていた。
そして十五分後、私達は無重量の世界に居た。
翔の声が聴こえる。
『私達は地球の軌道に載りました。高度は二百五十キロ、速度は秒速七.三キロです』
私の横の窓の外には綺麗な宇宙空間が広がっていた。宇宙船が昼側に入ると地球の姿も見えて来た。二酸化炭素の暑い雲に覆われた地球は、もう昔の面影は無かった。
「金色の雲に覆われているんだ・・昔は青い星だったのに・・」
私はその地球の姿に衝撃を受けていた。
『これから第二宇宙速度 秒速十.四キロに加速し、地球軌道を離れます。その後更に加速して金星に向かいます。金星は現在、西矩にあります。このまま加速すれば約百二十日後の“衝”のタイミングで金星に最接近出来る予定です』
翔のアナウンスを聞いて客室から不安の声が上がる。
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