金星へ

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金星へ

約四ヶ月後、宇宙船は金星に近付いていた。 その日、(かける)が、私と地球(テラ)をコックピットに招待してくれた。 私は地球(テラ)を抱えて、宇宙船の最も前方にあるコックピットのドアを開けた。 その窓の外一杯に、とても綺麗な金星の青い姿が広がっていた。 その星は青い海が大きな面積を占めていて綺麗な白い雲も見える。 操縦席に座っている(かける)地球(テラ)を預けると地球(テラ)は嬉しそうに(かける)の顔を触っている。私はその姿に微笑みながら、(かける)の操縦席の後ろに立った。 金星の左側に大きな丸い星が見える。 「(かける)、あの星は?」 私はその星を指差し、(かける)に問い掛けた。 「あれは金星の衛星だよ。金星からの距離は三十八万キロ。あの大きさなら金星の地表からも素晴らしい表情を見せてくれると思うよ」 (かける)の説明を聞きながら、もう一度、青く光る金星を見つめた。 あの綺麗な星が地球を離れた私達の第二の故郷になるんだ。 私は(かける)の膝の上に居る地球(テラ)の頭を撫でながら呟いた。 「もう、地球には帰れないのね」 (かける)が私を振り返ると、ニッコリ笑い。 「その答えはYES or NOかな」 そう言って、彼はセンタークラスターのキーボードを操作した。コックピットの大型モニターの表示が切替り、金色の星が映される。
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