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地球脱出
隕石大衝突から十年が経った。
この間に地球の人口は十分の一になった。隕石は地殻内の二酸化炭素の層を深く抉り大量の二酸化炭素を大気に放出させた。また沢山の火山噴火も誘発した。それらの温室効果ガスの影響で地球の平均気温は十二度も上昇し、低緯度付近の国々は居住不能になっていた。それ以上に深刻な問題は、塵で太陽光が遮られ農業生産に甚大な影響を与えた事だ。食料の自給率は危機的な状況だったし、植物の光合成も出来ず、更に二酸化炭素濃度の上昇とそれに伴う気温上昇が続いていた。
もう人類は滅亡する寸前まで追い込まれていた。
各国は人類の生存に向けて地球に残った資源と英知を振り絞って、地球最期の計画を進めていた。
地球脱出計画を・・
私は三年前に金城翔と結婚していた。私達の間には一歳になる娘“地球”が生まれていた。
夫の翔は地球脱出用の宇宙船開発リーダーとして働いていた。翔の職場は研究施設と試作工場を持ち、宇宙船に搭載される先行技術とそれを実証する試作宇宙船の開発を担当していた。
各国はこれらの宇宙船開発に全てのリソースを注ぎ込んでいた。しかし、十年前の隕石衝突の影響を直接受けた国々は悲惨だった。地球脱出を行う資源も人材も不足していた彼等は、地球の滅亡と運命を共にするしか無かったんだ。それらの国では戦争やテロも頻発していた。
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