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表彰台では、優勝トロフィーと日の丸を掲げた暁が満面の笑みで会場の声援に応えている。
暁は大スター。
舞は、離れたところから見守った。
様々な妨害工作を乗り越えて掴んだ優勝。
暁がトロフィーに負けないぐらい輝いている。
「暁、本当に良かった」
自分の存在が迷惑なだけだと思っていたけど、そんなことを思わず励ましてくれた暁が、今、世界中から称賛を浴びている。
「なんだか、遠いところの人になっちゃったかな」
でも、明日になればまたいつもの笑顔で話しかけてくれるだろう。
「またキノコ汁でもごちそうになろうかな」
これからはベニテングダケを愛せる気がする。
そんなことを考えながら一人で観ていると、背中をドンと押された。
誰がぶつかってきたのだろうと思いながら、その顔を見た途端に血の気が失せた。
咲夜だ。恐ろしい形相で睨んでいる。
「咲夜……。どうして……」
「あいつ、許せねえ」
「あいつって、暁のこと?」
咲夜は怒りで唇が小刻みに震えている。
暁が、マイクで喜びを伝えている。
「チームアカツキの皆と大切な人に、今の喜びと感謝を伝えます」
暁の視線が会場の舞を探している。
咲夜が暁に直接何かする気だと直観した。舞は必死に止めた。
「お願い! 暁の晴れ舞台を邪魔しないで!」
「うるさい。黙ってみておけ」
進もうとする咲夜を止めようと、前に回って立ちはだかった。
「邪魔だ! どけ!」
「キャッ」
強く突き飛ばされて、地面に倒された舞は、頭を強く打って意識を失った。
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