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(今なら大丈夫かな?)
Duckがアヒルという意味ぐらいは知っているが、アビーが何を言いたかったのか確認したくて、暁が椅子に座ったところに近づいて質問した。
「ねえ、暁。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、今いい? 凄く、くだらない質問かもしれないんだけど」
「いいよ。言ってみて」
「『You're duck.』って言われたら、どういう意味?」
「『あなたはアヒル』だね。アメリカでは、アヒルには責任を取ることから逃げるって意味がある。つまり、『やられっぱなし』とか、『事なかれ主義』とか、そういう意味になる」
「ああ、そういうこと……」
実乃梨に反撃しない自分を見て、アビーはふがいなく感じたのだろう。
こんなのを相手に、ムキになるのが馬鹿馬鹿しくなったのかもしれない。
「もしかして、今のセリフをアビーに言われた?」
暁が心配した。
「そうだけど……、でも、平気だから! アビーが声を掛けてくれただけでも嬉しいから。ああ、そうそう。暁に怒られたって反省もしていたわ。暁が言ってくれたお陰ね。ありがとう」
暁の負担にならないよう、必死に笑顔を作った。
暁は、納得していない顔だ。
「ごめんね。大事な時に私の相談に乗ってもらって」
「いや」
暁はニコッと笑顔を作った。
「むしろ、緊張がほぐれた。きっと、いい結果が出せる」
「ウソでも嬉しい」
「ウソじゃないよ。舞は僕の勝利の女神だ」
暁が言うと、全然わざとらしくない。
「舞、今度は最後までここにいてくれない?」
「邪魔にならない?」
「距離を取っていれば大丈夫。舞が近くにいてくれると思うと力になる」
「分かった。ここにいる」
「さっきのタイムは、スモークのペナルティがなければ十分に優勝を狙える数字だった。今度は1位になる」
手ごたえがあったのだろう。自信に満ちた顔をしている。
暁が望むなら、いくらでも力になりたいと舞は思った。
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