5. 飛翔

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「ファイナル4に進んだチームは、スタート地点に着いてください」  アナウンスが案内している。 「行ってくるね」 「頑張って。暁なら、絶対優勝できる」  ファイナル4も、順位順にスタートする。 「これで、決まるのね」  エアレースワールドシリーズの優勝者が4人の中から決まるのだ。  そう考えたとたん、緊張してきた。 (暁、頑張って!)  舞にできることは、祈ることぐらい。 4機のフライトはすぐに終わり、最初の暫定順位が出た。 1位は、スペインチーム。暁は2位につけた。そのタイム差は、わずかに0.0002秒。  あとはペナルティタイムの加算。それ次第で、結果はいくらでも変わっていく。  雲霄と晴朗が話している。 「何かあれば実況で言うもんだけど、特になかったなあ」 「このクラスになると、ペナルティもそんなに出ないんですよ」  祈るように見ていると、スペインチームに「DNF」(失格)がついた。 「え? 何があった?」  会場中がざわざわしていると、場内アナウンスが流れた。 「スペインチームはGが規定をオーバーしたため、DNFとなりました」  会場全体に優勝候補の失格に落胆と驚きが広がる。 「なんてこった!」 「優勝候補の一つだったのに!」  舞は戸惑った。 「なんで失格だったの?」  暁がルールにうとい舞に説明してくれた。 「加速重力がオーバーしたんだ。その場合は失格となって、ゴール記録すら残らない」 「ペナルティタイムじゃすまないのね」  厳しいルールだ。  あとは、暁にペナルティタイムがあるかどうか。  全員で発表を待つ。 「優勝は、『チームアカツキ! ジャパン! RUN TIME00:54.00382』  優勝が確定した。 「やった! 優勝だ!」 「バンザイ!」  皆で手を取り合い、ジャンプして喜びを爆発させた。 「良かった。本当に良かった」  舞は安どの涙を浮かべた。
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