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学校では、親友の実乃梨から、咲夜とのことであれこれ口出しされてうんざりしていた。
『一方的に別れを言うなんて、勝手じゃない? 可哀そうよ』
実乃梨が咲夜の味方をする。そのことが舞には理解できない。
『だって、山に捨てられたのよ? 私は可哀そうじゃないの?』
『それだって、どうしてそういうことをしたのか、ちゃんと理由を聞いた?』
『こっちは遭難しかけたの! 理由なんて聞きたくない!』
『咲夜と会って、ちゃんと話し合ったら?』
実乃梨が咲夜を庇うことが理解不能。
何度か言い争いをしてしまった。
とうとう、咲夜の名前を聞くだけで寒気と吐き気を催すようになった。
それでなくても周辺にチラチラと姿を現すから気になっている。
無視しているが限界がきそうだ。
『またパイロットの彼のところ? 乗り換えが早いわね。パイロットなら自慢できるもんね』
暁のことを少し喋っただけで、もう新しい男に乗り換えたと嫌味を言われた。
実乃梨の顏も見たくなくなって、放課後や週末に遊ぶこともなくなった。
恋人と親友を失い、支えになっていた楽しみも失って、ひどく落ち込んでいるところに暁からメールが来た。
『舞、ハンガーに来てくれない?』
「急に、どうしたんだろ?」
連絡が来るとは夢にも思わなかった。
邪魔にならないよう、舞からの連絡を我慢していた。
暁には一切腹を立てていない。
暁にとって、一番大事なことはエアレースで勝つこと。
だから、不思議に思った。
「今はエアレース直前で、そのことに全精力を傾けているはず。大事な時期に会いたいなんて、アビーが反対するだろうに。内緒なのかな?」
呼ばれたことは飛び上がるほど嬉しかったけど、アビーが気になる。
のこのこ行けば、追い返されそうな気がする。
「それとも、同意? だとしたら、余程のことでもあった?」
念のため、目的を確認する返事を送った。
『急に、どうしたの? 忙しいんじゃないの? 何かあったの?』
返事はこない。
「どうしちゃったんだろう?」
気にはなったが、運悪く、間もなく定期テストが始まる。
試験勉強のために行動を控えざるを得ない。
「気になるけど。勉強もしなきゃ」
机に向かっても、暁が気になって全く捗らない。
集中出来ないから、気分転換と称して音楽やネットに手を出してしまう。
そんなときでも、たまにケイタイ画面に目を落す。
「こないなあ……。もう一度、送ってみようかなあ……」
悩んだが、何度も送ってしつこいと思われるのは嫌だったので我慢した。
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