3. 曇天

3/7
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
 学校では、親友の実乃梨(みのり)から、咲夜とのことであれこれ口出しされてうんざりしていた。 『一方的に別れを言うなんて、勝手じゃない? 可哀そうよ』  実乃梨が咲夜の味方をする。そのことが舞には理解できない。 『だって、山に捨てられたのよ? 私は可哀そうじゃないの?』 『それだって、どうしてそういうことをしたのか、ちゃんと理由を聞いた?』 『こっちは遭難しかけたの! 理由なんて聞きたくない!』 『咲夜と会って、ちゃんと話し合ったら?』  実乃梨が咲夜を庇うことが理解不能。  何度か言い争いをしてしまった。  とうとう、咲夜の名前を聞くだけで寒気と吐き気を催すようになった。  それでなくても周辺にチラチラと姿を現すから気になっている。  無視しているが限界がきそうだ。 『またパイロットの彼のところ? 乗り換えが早いわね。パイロットなら自慢できるもんね』  暁のことを少し喋っただけで、もう新しい男に乗り換えたと嫌味を言われた。  実乃梨の顏も見たくなくなって、放課後や週末に遊ぶこともなくなった。  恋人と親友を失い、支えになっていた楽しみも失って、ひどく落ち込んでいるところに暁からメールが来た。 『舞、ハンガーに来てくれない?』 「急に、どうしたんだろ?」  連絡が来るとは夢にも思わなかった。  邪魔にならないよう、舞からの連絡を我慢していた。  暁には一切腹を立てていない。  暁にとって、一番大事なことはエアレースで勝つこと。  だから、不思議に思った。 「今はエアレース直前で、そのことに全精力を傾けているはず。大事な時期に会いたいなんて、アビーが反対するだろうに。内緒なのかな?」  呼ばれたことは飛び上がるほど嬉しかったけど、アビーが気になる。  のこのこ行けば、追い返されそうな気がする。 「それとも、同意? だとしたら、余程のことでもあった?」  念のため、目的を確認する返事を送った。 『急に、どうしたの? 忙しいんじゃないの? 何かあったの?』  返事はこない。 「どうしちゃったんだろう?」  気にはなったが、運悪く、間もなく定期テストが始まる。  試験勉強のために行動を控えざるを得ない。 「気になるけど。勉強もしなきゃ」  机に向かっても、暁が気になって全く(はかど)らない。  集中出来ないから、気分転換と称して音楽やネットに手を出してしまう。  そんなときでも、たまにケイタイ画面に目を落す。 「こないなあ……。もう一度、送ってみようかなあ……」  悩んだが、何度も送ってしつこいと思われるのは嫌だったので我慢した。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!