ありのままの君でいて

３

「変更、ありがとう！本当に助かった。」

　そう言いながら図面をしまう北川さんの手元を見ていたら、暖かな色彩の絵が目に入った。

「それ…」
「ああ、これ？杉山様に少しでも家のイメージを掴んでもらえたらって思って。」
「北川さんが描かれたんですか？」
「うん、そう。恥ずかしいな、設計の人に見られるのは。」

　照れくさそうに言うけど、謙遜だ。キッチンから見たリビングダイニング、奥の和室まで見渡す風景が描かれていて、一目で新しい家のイメージが分かる。そのまま額装したらインテリアになりそうな位、優しくて素敵な絵。

「素敵です。いつもこういう事をされてるんですか？」
「うん、まあ。一生に一度の高い買い物をしてもらうんだし、出来る限りの事をして、安心して契約してもらいたいからね。」

　顔で仕事を取ってきているなんて、やっかむ人もいるらしいけど、そうじゃ無いと思う。北川さんのお客様に対する熱意や誠意が伝わってくる。

「契約、取れるといいですね。」
「だね。川瀬さんにも手伝ってもらったんだし、取らないとな。でも競合がヤマトハウジングなんだよなぁ。」

　全国規模の大手ヤマトハウジングと、ウチみたいな地元の小さい建設会社ではネームバリューが違う。北川さんの気持ちがお客様に届くと良いなぁと思う。