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「よしっ、帰ろっか。送って行くよ。」
そう言った北川さんは、窓の外へと視線を向け、「うわぁー。」と小さく呟いた。外は少し前から雨が降り出し、本降りになってしまっていた。
「しまったなぁ。今朝は降ってなかったからなぁ。」
昨日と同じで、雨は出勤時には降っていなかったのに、退社時刻になってこれだ。この時期は仕方がない。
「もしかして、傘、無いんですか?」
「そうなんだよー。しまったなあ、今朝は急いでてすっかり忘れてて。」
「折りたたみ傘で良ければ、予備があるのでお貸ししますよ。」
北川さんに「どうぞ」と渡した傘は、今朝、井上先輩から返してもらったもの。良かった、乾かしてたたみ直しておいて。
遠回りになるし、家が近いので送らなくて良いと何度も辞退しようとしたけれど、そこは譲れないらしく、徒歩5分の独身寮まで並んで歩いた。
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