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「お兄さん、良かったんですか?待ち合わせとかされてたんじゃ…?」
「気にしないで。アイツはただの野次馬だから。」
北川さんが連れてきてくれたのは、会社の最寄り駅近くの、ちょと小洒落た居酒屋さん。お兄さんとは会社の前で分かれた。野次馬って、何だろう?
それにしても、日本酒のラインナップ、豊富だなぁ。メニューを前に真剣に悩む。お酒の中では日本酒が一番好き。これもいつも“意外”って言われる。フワフワな服を着ているからって、甘いカクテルが好きとは限らないと思うんだけど。
前に付き合った人は、初デートで私が冷酒をグイグイ呑むのを見て、ひいてしまったらしい。あっという間にフラれてしまった。向こうから“好き”って言われたのに、彼は一体私のどこが好きだったんだろう?
「好きなの、頼んで?」
「えっと、じゃあこれ、冷酒で…。」
銘柄を指さしながら、恐る恐る言ってみた。
「冷酒か。呑んだことないな。これオススメ?」
「はい。あとこれとか、フルーティーで呑みやすいです。」
「へぇ!美味しそうだね。俺も今日は日本酒にしてみよ。」
そう言って二人分、注文してくれた。
「意外って、言わないですね、北川さんは。」
「うん。昨日も言ったけど、一人の人にも色んな面があると思うし、それ全部ひっくるめてその人だと思うから。一人一人違う色で当たり前。人間の数だけ色がある、って思うんだよね。」
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