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母から教わった貸し借りの教訓で、貸して貰う側の心得は、借りた物は自分の物以上に大切に扱い、元の状態よりも良い状態で返す、ということ。
物は使えば多少なりとも傷んだりするのだから、元の状態より良く、というのはなかなか難しい。だけど、そういう心待ちで、という事だと思う。少なくとも、借りた状態と同等ではあるべきだと思う。
濡れたまま、ぐちゃぐちゃと畳まれた折りたたみ傘は、もしや井上先輩の嫌がらせなのだろうかと訝ったけれど、彼女の屈託ない笑顔は本物に見えた。
そういう人もいるのだと、受け入れるしかない。そっと傘を開き、ロッカールームの片隅で乾かさせてもらう事にした。
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