ありのままの君でいて

２

　変更は、階段を下げる事によって生まれたスペースに簡単なアクリルの吊り戸を設置し、リビングとの間に仕切りを作り、更にトイレ前に奥行きの浅い収納棚を設置する、というものだった。

「…とすると、トイレの天井に階段出ちゃいますね。それもOKなんですか？」

「うん。それよりも仕切りと収納棚の方を優先したいって。了解済。階段は、むしろ廻り階段の方が良いって言ってもらってるし。」

　そこまでキチンと了解が取れているなら、後はその通りに図面を変更するだけ。私にも出来る事で良かった。

「そうですね。私も踊り場がない方が好きです。これ、この変更、良いですね。」

　デメリットもあるけれど、メリットの方が大きい。それに、これを営業の北川さんが考えたというのが凄いと思う。

「いや、杉山様の奥様の要望でね。リビングとトイレの間に仕切りが無いのかって驚かれてさ。なんとかしたくて苦肉の策だよ。」

　それでも、そういう発想が出るのはさすがだ。やっぱり精鋭部隊の営業三課に選ばれるだけの理由があるのだと思う。

「変更が終わったら内線でお知らせしますから、課に戻って頂いてて大丈夫ですよ？」

　私がそう言うと、北川さんは「じゃあ、お願い」と営業三課のある２階へと立ち去った。