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小学五年生
去年、太陽は試験に落ちた。
それでも三段階ある試験、全て受けられた。
最後の最後で落ちたのだ。
それほど落ち込んではいなかったので、月子は安心していた。
ただ、こんな時は、自分が邪魔をしているのではないかと思ってしまう。
去年の猛勉強中も、太陽は月子を後回しにする事は無かったからだ。
朝食、夕食もちゃんと作り、授業参加も運動会も学芸会も観に来てくれた。
運動会のお弁当は、早起きして一緒に作った。
遠足のお弁当は、知らずに開けた方が楽しみがあるだろうと、太陽が一人で作っていた。
父母の会も、太陽はきちんと出た。
「役員は出来ませんが、出来る事はさせて頂きます。」
と、他の保護者の前で言った。
小学五年生の時、太陽は交通安全週間の立ち会いを頼まれた。
一週間、毎日、通学路に出て立っていた。
この頃には、月子はもう自分で通学していたから、太陽が途中にいるのは嬉しかった。
通り過ぎる時に手を振る。
「ちゃんと、前向いて歩け!」
小さい声で太陽は言う。
「はぁい。」
小さい声で返す。
「月子ちゃん、お兄ちゃんだよね?」
「うん。」
りえちゃんは後ろを見ながら話す。
「やっぱりかっこいいね?」
「そう…かな?普通じゃない?」
やっぱり誰かが太陽を褒めるのは、月子は面白くなかった。
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