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家出少女と万屋さん!
「ん〜!」
部屋の窓から溢れる光に伸びをしながらベッドから降りて深呼吸
机の上に置いておいた結いゴムで髪を二つに結ぶと、そのままもう一回のびをしてからテトナは部屋を出て下へと降りていった
万屋の2階は居候している人達のために開けているのだとレナトが言った通り、テトナ以外も万屋にいる時はどこかの部屋が埋まっているのだ
軽やかな足取りで下へと降りていく
「おはよう!」
「ん?ああ、おはよう」
机の座っていたのはレナトとアルカ、アルナ
お茶を飲みながらアルカとアルナが編み物をしているのをのんびりと眺めていたようで、軽い調子でテトナに手を上げてきた
「今日は早いんだね!ご飯いる?」
「欲しいな。もらえるだろうか」
「任せて!二人はどうする?」
「私は欲しいわ。温かいものが食べたいかも」
「私は後でいいわ。もうちょっとで終わるの」
「わかった!」
手早く保管スペースを覗いて幾つかの野菜を取り出し丁寧に洗っていく
残念ながらお肉はないのでただの野菜スープになりそうだけど…と思いながらいつも通りに鍋いっぱいに作って配る
「おっいい匂いだ!私の分もあるー?」
「……土産」
アルナ以外3人でさあ食べようとスープを持ち上げた時、一緒に帰ってきたのかリニーとアイゼンが外からやってくる
アイゼンの手には引きずるようにみっしりと鱗に覆われた何かが見えた…奥には大きな巨体と血の跡が続いている
どうやら持っているのは尻尾のようだ
「勿論!たくさん作ったからお昼まで持つよ!……お土産?」
「下級鱗竜。さっき居たから狩った」
「竜!?すごい!!でもこれ私お肉にできないよ!?」
「美味しいご飯を食べるためなら私がひと肌脱いじゃうよ!捌くからお肉食べたいなぁー!甘辛で!」
「わ、わかった!(なんかすごいいっぱい量あるけどみんないるから食べ切れるよね…)」
さっきまでいた台所に立ち、むんとない袖をまくる
窓から見える外は青空が澄み渡っていて、どこか自分の心のようだなとテトナは思った
居候という立ち位置に変わりはないものの、明確に言葉にして初めて帰る場所となったような気がしたのだ
「テトナ!用意できたよお肉!」
「はーい!」
リニーの呼びかけに、テトナは満面の笑みで振り向いた
家出少女は自分の居場所を見つけたのだった
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