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彼女と僕の約束 3
流れ星が始まるまであと20分。早速掃除にとりかかった。彼女が触りそうなところ……柵、窓、しゃがみこんだら汚れてしまうから床もだ。物入れになるような小さなベンチは特に念入りに拭いた。せっかく彼女から分けてもらった温もりも、濡れたタオルと夜風のせいで消え失せてしまった。後ろから彼女の足音が聞こえた。
「そうちゃん、寒くない?」
「大丈夫だよ」
震えている指を隠す。彼女に顔を見せないように床に向き合った。
「お手伝いとか、ない? はやくしないと流れ星流れていかない?」
「ないよ。まだ開始時刻じゃないし大丈夫。ほら、部屋に入っといて」
彼女にこんな寒い思いさせられるか、と心の中で言った。彼女は名残惜しそうに窓の近くにしゃがみこんだ。今日は言うことが聞けないようだ。
「……風邪、引くでしょ。こたつの中入ってゆっくりしてていいから」
「やだ、最近そうちゃんと一緒にいる時間全然ないし、顔もちゃんと見てない。一緒にいる」
ふてくされてむくれた表情は、彼女の幼さを一気に加速させた。このまま永遠に歳を取らなければいいのに。そうすれば彼女は他の人に頼って生きようとしない。不自由だからこそ彼女は僕と一緒に生きようとするはずだから。
そう思うと彼女の頑なな意思も、段々可愛いわがままに見えてきて、思わず許してしまったが後で条件を付けくわえた。
「……分かった。でも、僕の部屋の椅子にかかってるブランケット取っておいで。腕以外は入れないで手探り、勿論それ以外は触れないこと……分かってると思うけど」
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