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帰り道、五分ほど歩いたところで、急に大地に腕をつかまれ脇道に引っ張られた。
「蒼太走るぞ!」
「え!? なに?」
呆気にとられる僕に、綾那も張りつめた表情で
「着けられてる」
と続けた。
「撒けそう?」
心配そうな綾那の声。
「あたしが居たのに何で? あたしが居れば、蒼太がCHなのも隠せるし、|検索(サーチ)も防げるはずなのに――」
「お前のせいじゃねーよ」
大地が警戒を強める。
「あんた、まだ正式な|騎士(ナイト)じゃないんでしょ? 剣持さんに連絡した方が良いんじゃない?」
「あぁ、そうだな。綾那、頼む! 蒼太、本番だ! 気を抜くなよ!」
尾行者を振り切るために、あちこちの路地に入り、人混みを抜けて走る。僕はもともと運動は苦手だったが、ここ二ヶ月の特訓の成果か、なんとか大地に迷惑をかけずについて行ける。
いや、僕がいるだけで十分二人には迷惑をかけているんだが――
その考えを見抜かれたのか、大地が
「蒼太、お前自分が居なければこんなことになってないとか、迷惑かけてるとか思うなよ。俺らはお前を守りたいからそうしてるんだ」
と、こちらを見る。
「でも……」
「でもじゃねーよ、バーカ。休憩は終わりだ、いいから逃げるぞ」
そう言って、また細い路地に向かって大地が走り出す。
「綾那、もっとレベル上げられるか? 」
「さっきからやってるんだけど……あいつにはなんか、足取りがばれてるっぽいの」綾那は大地に答た。
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