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ドンッ――
「ごめんなさ……」
大きな手で口を押さえられ、軽々と抱え上げられ手しまった。
「おねえちゃんに何するんだ! はなせ!」
律が、私を抱え上げた大きな男に向かって掴みかかったのが見えた。
「じゃまだ、どけ」
野良犬でも払うように、軽々と律を押しのけるが、律も必死にしがみつく。
「おとーさーん! おね……んぐっ……」
ガツッ――
鈍い音とともに、律は男に蹴り飛ばされ地面に放り出された。
「ん――! ッン――!!」
必死で身体を捩り、男の手を振りほどこうと必死に藻掻くが、子供の力などたかが知れている。
大柄なその男の拘束はビクともしない。
それでも抜けだそうと必死で藻掻いていた。
「うぐっ……」急に男の拘束が緩んだ。
その隙に、なんとか男の手を振りほどき、律の倒れた方に走り出した。
その時、一台の車がタイヤを軋ませて停車し、男を乗せて猛スピードで走り去っていった。
「綾那! こっちだ!」
それまで見たこともない怖い顔で、父が立っていた。
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