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「お前ら、俺をなんだと思ってんだ! まったく……」
一ノ瀬大地が、大荷物を抱えて入ってきた。そう、あの後外に出ることのできない僕らは大地に電話して、猫の生活に必要なものを一式を買ってきてもらったのだ。
「大地、ありがと。悪かったな」
僕は入り口で、大きな袋の一つを受け取った。
「大地ありがとー」
綾那は満面の笑みで、大地が買ってきた猫グッズの品定めをしている。その後ろで春花ちゃんが子猫を抱いて、もじもじしている。
「この子は稲田 春花ちゃん。しばらくこの部屋で一緒に生活することになったんだ」
綾那が開封作業に夢中なので、僕が紹介した。
「こっちは一ノ瀬大地、体は大きいけど良いやつだよ」
春花ちゃんは恥ずかしそうにコクリと頭をさげ、大地はよろしくとニカッと笑った。
「その猫の名前は?」
大地も買ってきた荷物の開封を手伝いながら、春花ちゃんに問いかける。
「ノワ、ノワールのノワ。真っ黒だから」
「俺はヤマトとか、ジジとかかと思ったよ! ノワか可愛いな」
屈託のない大地に、春花ちゃんは小さく笑顔を見せた。
「春花ちゃんもこっちおいで、見てコレ! 全然可愛くないよー」
綾那は袋の中から黄色や赤や青の奇抜な色の羽が、不恰好な胴体に付いた猫じゃらしを引っ張り出した。
それまで春花ちゃんの腕の中で眠そうにしていたノワが、それを見て急に体を捩って腕の中から抜け出そうとしたので、ノワは気に入ったようだが。
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