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第1章 はじまりの時 / 誘拐
昼休みに携帯を見て、あまりにも早い連絡に驚いた。
なるべく早く来いと病院から伝言が残っていた。
あの初老の医師でも知らなかったものが、そんなにすぐにわかったのか?多少疑問に思いながらも、病気のことが分かるならと放課後病院に向かった。
昨日と同じように、受付機に診察券をかざし順番待ちの間腰を落ち着ける場所を探し、待合室を見回していると、椅子に座るよりも前に診察室に呼ばれた。
中に入ると昨日とは別の医師が座っている。
どこか医師には似つかわしくない雰囲気だ。
「どうぞ」
目の前の椅子を指し示す医師。
「はい。あの、昨日の先生とは違うんですね」
「あぁ、彼は今日はちょっと休んでいてね。君の症状なんだが、もう少し詳しく調べる必要があってね。ちょっと検査薬を注射した後にもう少し詳しく検査をさせてくれないかい」
「分かりました」
僕は腕まくりをし医師に腕を差し出した。
消毒のアルコールの独特の臭いと、ひんやりとした感覚の後、チクリと針が刺さる。
注射器の液が、殆ど体内に注入されたころ、何かが変だと気づいた。全身の力が抜け、体が崩れ落ちる。
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