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しかし、こんなことがあるのか。
さっきまで動かなかった足が、今度はふらふらと動き出した。
まるで、引き寄せられるように――
(聞いたことがある気がする)
誰が弾いているのだろう。
なぜかは分からないが、懐かしい。
さっきまで身を寄せていた植木からふらふらと離れた霖之助は、校舎へと近寄った。
「どうやって入る……?」
ふと呟けば、窓がすっと開いた。
「え?」
誰も触れていない。
再び恐怖が湧いた。
が、それ以上にこのピアノの音色の正体が知りたかった。きっと誰かが弾いているはずだ。
それが、生きている人ではないとしても――
「よし」
小さくだが気合を入れた霖之助は、窓の桟に手を掛けたのだった。
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