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親友が、薄っすらと笑みを浮かべた。最近あまり見なかったが、それが彼女本来の顔だ。
この学校の夜の主――トイレの花子さんは、ふわりと赤いワンピースを揺らした。
華子は不安になった。
「どしたの?」
『ハナを追ってきたのよ』
「えっ⁉ だ、誰が……」
ふっと浮かんだのは、直也だった。
「まさか、直君?」
華子の答えに、この小学校の主は小さく首を振った。
『もう一人いるでしょうが』
「えっ? 誰?」
不安が募る。
自分のせいで、変なことに巻き込んでしまうのではないか。
華子の表情に、花子がふっと息を吐いた。それは、華子の親友の顔だった。
『あっちが勝手に入ってきたんだから、ハナが気にするこたぁないわよ』
「でっ、でも……!」
『あたしも、油断してた。まさか、このピアノまで聴こえちゃうとはね』
音色が響く。
これは、やはり霊感がない人に聴こえないのだろうか。
華子の胸の奥が、どうしてかちくりと痛む。
(な……なんだろう? ちょっと苦しい気がする……)
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