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一体、この小学校はどうなっているというのだ。
霖之助は、廊下をこれでもかというほど疾走していた。
黒い影が目の前に突如現れたかと思えば、次は耳障りな笑い声が背後から聞こえてきた。
驚いて振り返れば、なんと人体模型が猛ダッシュでこちらへ向かってくるではないか。
(嘘だろ⁉)
まさに学校の怪談――
普段、あまり感情を表に出さないと皆から言われている霖之助も、さすがに狼狽して、階段を駆け上がり、目についた教室へ逃げ込んだ。
教室の扉を勢い良く、しかし音を立てないように閉め、霖之助は隅に身を寄せた。
息が上がって、肺が痛い。体力があるとはいえ、訳の分からない現象に混乱もし、慣れない場所で走ればこうなるのだと知った。
暑いはずなのに、汗がすぐに冷えていく。
「……どうしよ……?」
思わず声が漏れたことに、両手で慌てて口を塞いだ。
少しだけ手が震えていた。
(あ……こわい……)
気付いた瞬間、恐怖が体を駆け巡ったと同時に、情けなくもなった。
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