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「出してよ! ねぇ!」
大きく声を上げても、助けはない。それは分かっているけど、毎回叫んでしまう。
トイレの個室が、いつも以上に薄暗く感じる。悲しさと悔しさで、目の前が霞んでいる。
ドアの向こうで、クスクスと面白がる含み笑いとひそひそ声が聞こえてきた。自分の声は、大きくすればするほど、無視されてしまうというのに、相手の声は潜められるほどこっちに鋭く刺さる。
ぼやける視界を、必死で拭う。
泣いてはダメだ。向こうの思う壺になってしまう。
再度声を上げた。
「出してっ……ねぇ! キーホルダーも返してよぉ!」
四限目の体育が終わった後、ランドセルに付けていたお気に入りのキーホルダーが無くなっていることに気が付いた。
通学路で落としたことは考えられない。だって、三限目までは、ちゃんとランドセルの横に付いていた。
だとすれば、考えられることはただ一つだった。
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