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夜の学校に忍び込むのは、何度やっても慣れない。
まず、人目を気にする。今の学校はセキュリティが厳しい。不審者による事件が多いからだ。見付かったら、注意だけでは済まないだろう。
が、まだ橘華子は中学二年生だった。
懐かしくて、つい――と見付かった時の言い訳は考えていた。かなり怒られるだろうけれども、それだけで済むだろうと、華子は若干諦めている。
(まあ、怒るんだったら、裏のフェンスを直してからにしてほしいかな)
華子は、フェンスの裂け目に自分の体を滑り込ませながら思った。
それに、事件が本当に起こってからでは遅い。最近は物騒だ。
怪談よりも、お化けよりも怖いもの。それは、生きている人間だ。
子どもを守れるのは、他の誰でもない。身近にいる大人になった人間だけなのだから。
しかし、ここが塞がれてしまうのは、正直困る。
(ここが塞がれても、きっとまたどっかから入れるようにしてくれそうだけど)
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