告白

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 何故このタイミングでプロポーズなんだろう。つくづく結婚運がない。 「このタイミングだと思っている。人生のパートナーとして、玖美子と支え合って生涯を終えたい。そばに居て欲しい」  それは私を愛しているということに変わりない。同性愛者だということを認め、社会的ステイタスと世間体を得ることで安心できる。  それが直樹さんの求める幸せ?  直樹さんの熱い視線の中、私は添えられた大きな手を見たままそっと息を吐いた。手の震えに気付かれたくなかった。 「お互いの秘密を知った今、信頼できる?」 「・・・・・・」 「このタイミングでは受け取れない」 「・・・・・・」 「直樹さんも正直、驚いているでしょ?」 「・・・・・・」 「ごめんなさい」 「・・・・・・玖美子、こっちを見て」  名前を呼ばれ目を合わせた。 「玖美子、君は僕を愛していた?」 「・・・・・・分からない」  私から温もりは離れて行った。 「雨の中、颯爽と歩く君の姿は、泣いているのか微笑んでいるのか・・・とても美しかった。一瞬で恋に落ちたよ。控えめだけど、いつも自信に満ちた顔をしていて」  遠い目をして立ち上がった。 「今もそう。こんな時くらい、目を逸らしてくれたら良いのに」  それでも私は直樹さんから目を逸らさなかった。  苦笑いを浮かべた彼の顔。   翌日、私は声を失った。
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