言霊

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言霊

 水平線に沈む太陽が見たい。  十月、夕暮れ時の海は寒いと予想し、厚手の上着とブランケットを車に積む。  コーヒーも準備していこうかと迷ったが、缶コーヒーでいいか。と思い直し、車を飛ばして一時間。  昨日の天気とは打って変わり、今日は朝から太陽が燦々と輝いていた。  昼間の気温は二十度を超えているので、車内に荷物を残したまま、私は身軽で海辺を少し歩くことにした。  駐車場の横には小さな水族館が併設され、園児が並んで手を繋ぎ行進していた。  もう帰る時間かな。  列を乱すやんちゃ坊主。  泣いている子をなだめるおませな女の子。  先生から離れない甘えん坊。  子供は無条件で可愛い。  思わず微笑んでしまう。  一人の園児と目が合い「こんにちは」と声を掛けられる。  当惑したものの「こんにちは」と私は渾身の力を振り絞って応えた。 「声、痛い痛い?」  心配そうに見上げてくる。 「大丈夫」  やっぱりその声は痛々しい。 「バイバイ」  純粋な瞳に救われ、清々しい気持ちで自動販売機コーナーに向かった。
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