17人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
雅楽川 朝陽の回想録
「じいちゃん!!!ねえ待ってよ!!どこに行くの!?」
早足で歩くその人を、必死に声を振り絞って呼ぶ。振り向いた瞳は、暗がりで冷たい光を湛えていた。いつも優しく俺の頭を撫でてくれたあの人はいない。幼いながらもそれを実感して、背筋が凍った。
「儂は、この世界の間違いを正す。お前のためにも。」
じいちゃんは俺の両肩に手を置いて、冷たく憎しみを燃やす瞳をまっすぐこちらに向けた。
「これは正義なんだ。」
一週間後だった。じいちゃんが死んだと、母さんが泣きながら俺に伝えたのは。そしてじいちゃんは、生物兵器の実験で殺されたと。
けれど俺には、それだけじゃない予感が、胸に燻っていた。
その時決めたのだ。強くなって、じいちゃんがどうして死んだのか、生物兵器が一体なんなのか、じいちゃんの言う『正義』がなんだったのか、本当のことを知るのだと。
それが小学二年の時。それから、四年後。
俺は見てしまったのだ。じいちゃんの姿を。たくさんの、動物達と共に。
最初のコメントを投稿しよう!