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2章:自分は何者か
掃除屋にきてから今日で一週間が経つ。
ここでの過ごし方はだいたいお決まりだ。朝起きて、掃除をしてシシド隊長から訓練を受けて、たまに買い出しに荷物持ちとして連れて行かれる。
訓練が嫌なこと以外は、平和で悪く無い日々を過ごしている。
そして、今日もこれから訓練が始まろうとしていた。今日はシシド隊長が不在にしているため、隊士の一人であるスレンに教えてもらうことになっていた。
スレンも若い隊士で、僕よりちょっと年上のお兄さんって感じだ。性格は気さくで、誰とでも仲良くなれるタイプ。剣の腕も評判が良い。
スパーーーーン!!!
対して僕は、今日も頭で景気良く竹刀の音が鳴る。
避けるだけなら得意だが、攻撃するとなると途端に動きがチグハグになって大きく隙が生まれてしまう。
そこをスレンは見逃さずに攻撃してくる。その衝撃で僕は床にバターンと倒れた。
「もうちょっと攻撃練習しないとだな。」
床に大の字になっている僕にスレンが苦笑いで言ってきた。
本気でやってもこれなので、お世辞にも戦闘要員には数えられない。でもこれで良かったんだ。腕がいいと早くも見習いを卒業してしまう。
「ウォーレンは攻撃するときに怖がっているのが伝わってくるんだよなぁ。でも君の素振りとかを見ていると姿勢が誰よりもよくて、見込みを感じる。見習い卒業するためには臆病なのを直した方が早そうだな。」
対人戦が苦手だと言うことがスレンにも隊長にもすっかりバレている。
「でも性格なんてそうそう変わらないと思う……」
僕は上半身を起こしつつ、思ったままのことを口にした。
「まぁそうだろうな。でも、大人になれば経験次第で色々変わる人もいるんだぜ?」
スレンだってまだ若いくせに、知っているように語るのが少しおかしかった。
ちょっとクスリときつつ、嫌味に思われないように返答した。
「達観って言うやつ?」
「そうだ。だから諦めずに続けるといいぜ。」
にっと笑う顔は、爽やかだ。
「それにシシド隊長はウォーレンのこと、どうしても強くしたいみたいだし」
「シシド隊長が……」
僕に一体何を見出したのかはわからないが、隊長は毎日訓練をつけてくれている。僕が味方を襲うリスクは考えてなさそうだ。
「こーんにっちは!!」
急に元気のいい声が響き渡る。
その声に僕とスレンは振り向いた。
ヒョコっと訓練場の出入り口から少女がのぞいている。ポニーテールで活発そうな雰囲気の子。隊士の服を着ておらず、なかなか見かけない服装をしている。
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