一日目

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あれほどの服があったのだ。髪飾りもあるだろう。 「確か、あのクローゼットの隣に棚があったはずよね……」 そう呟くと、早速部屋を出た。 ホールは人で溢れかえっていた。呼ばれたことに感謝を述べる者、久々の再会に抱き合う者、演奏の準備をしている者、食事を運ぶ者など様々な人がいるのを、天井からの月の光が優しく包み込んでいる。 ――これってとっても素敵だけど、なんだか場違いな感じ…… なるべく目立たないように自分の部屋まで戻って、髪飾りを付けたら、演奏家の後ろにでも立っていようと思ったが、それは失敗に終わった。 「リーファ! 遅かったな、何してたんだよ?」 「ぅえ!? いやえっとその…… な、悩んじゃって!」 「ドレスにか? それにしてはいつもと変わらない格好してるぜ?」 「あはは…… 結局これが一番素敵だからね」 ――ところであなた誰ですか…… そんな梨波の思いむなしく、話しかけてきた少年は「俺ダンス苦手なの知ってるだろ? だからさ、今日も付き合ってな」と言い、書斎の中へと梨波を引っ張って行こうとした。 「ま、待って! 私まだ部屋に用事が残ってて……」 「うん? そうなの? じゃあここで待ってるからさ。次は早くしてな?」 うん、と返事をして、梨波は足早に階段を上がっていった。 「それにしても、あの子の名前わかんないんだけど、どうしよう……」 部屋に入ってから、横にあった大きな棚を開けると、多種多様な髪飾りが入っていた。その中から今着ているドレスに一番合ったものを選び、それを付けると、鼻歌交じりに部屋の扉を開け、彼の元へ急いだ。例え初対面でも、少しでも可愛くなった自分に対して感想が欲しかった。 「どう?」 「どうって、何が?」 「……もういい」 そうだった忘れてた、ライカはこういう事に無頓着だった――ん? 「何で今、私――」 「ん? なんか言ったか?」 「ううん!? 何も?」 「ふーん、早く行こうぜ」 何で、目の前で書斎の扉を開けている彼の名前がライカだと知っていたのか。いやまさかそんなはずは。 「ライカ?」 「ん? どうした?」 やっぱり、これは彼の名前だ。この世界に来て、こんな現象が多く起こる。これは何なのか。きっと、リファータの身体だし彼女の記憶だ。そうとも思える。しかし、もしそうじゃなかったら。 ――そしたら、私は…… 自分が、怖い。
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