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「おい、どうしたんだよ。さっきからなんか変だぞ?」
「いや、別に何でもないよ」
「それだよ。話し方もいつもと違う」
「そんなこと、ない……です」
彼が心配してくれているのは分かっているが、今はその優しさも触れるのが怖い。胸の奥からぞわりと、嫌な感覚があった。
「なあ、大丈夫だから落ち着けよ。別に何も、俺はリファのこと怪しんでなんかない。お前はお前だよ。ただ、悩みがあるなら打ち明けてほしいだけだ」
その言葉を聞いて、いっそのこと彼に全て打ち明けてしまおうかと思った。そうすれば、どんなに楽になるだろう。どんなに安心するだろう。でも、話せなかった。
「……ありがとう。ちょっとすっきりした」
「そっか」
さてと、とライカは立ち上がると、本をぱらぱらとめくり始めた。
彼も本が好きなんだろうか。だとしたら、少し意外だった。見たところ、同い年くらいに見える。
そんなライカの姿を見て、幾分落ち着いた梨波は、彼に倣って本を読み始めた。
「なんか、珍しいな」
「何が?」
「ほら、いつもお母様に見つかったら大変だから少しだけですよって言って、すぐあっち行っちゃうのに」
「……今日は気分じゃなかった、かな」
「あっそ」
それ以上聞いてこない彼の隣が居心地よかった。今、人の多いホールにでも行って、さっきみたいになったらと考えると怖かった。
結局、書斎にいたことがばれ、二人はそれぞれの親に注意を受け、ホールに戻されたが、ほとんど終わりに近かったこともあって、すぐにライカは帰ってしまった。
「またな、リファ! たまには俺んちに遊びに来いよ!」
「うん、ありがとう」
「それにしても珍しいわね」
パーティーがようやく静まり、着替えも済んみ、さて寝るかといった頃、母親が話しかけてきた。
「あなたが彼とあんなにずっと書斎にいたこと。いつもはすぐ出てくるじゃない。気付いてないとでも思ってた?」
「あはは…… えと、今日はなんか断れなくて……」
「そう。でも、次はちゃんとしてね?」
それにはいとだけ答えた。
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